Solar-B搭載X線望遠鏡(XRT)用解析フィルターの設計

○下条圭美、鹿野良平(国立天文台)、Ed DeLuca(SAO)、他 Solar-B/XRT開発チーム

2005年夏期打ち上げ予定のSolar-B衛星には、太陽全面をX線で観測するX線望遠鏡(X-Ray Telescope : XRT)が搭載される。XRTでは、主に100万度以上のコロナが放射するX線を観測するため、光学系に斜入射型X線反射鏡、検出器にCCDが採用されている。斜入射型のX線反射鏡は数\rm\AAの短波長側まで集光できる特性があり、XRTは温度にして数十万度から数千万度のプラズマに感度がある望遠鏡となっている。ただし、太陽から望遠鏡に入射するX線の光子数が多いため、他の天体用のX線望遠鏡と違い、CCDによる分光観測が不可能である。そこでXRTでは、X線透過率の波長依存性が異なるフィルターを使用してコロナを撮像し、フィルター毎のカウントの差から温度や密度を求める。我々は、XRTの温度診断能力が広い温度域で確保され、なおかつ静穏領域からフレアまで観測できるX線解析フィルターの設計を行った。

フィルターの設計では、各フィルターによって太陽を撮像した場合のカウント推定値を基に、フィルターに使用する材料や厚さを決定した。フレアや活動領域等からのX線強度の推定には、過去の観測で求められたDEMとスペクトル計算用のデータベース(CHIANTI)を使用した。スペクトル計算時には、元素組成比にFeldmanモデルを、イオン化平衡モデルにMazzotta et al.モデルを採用した。

これらの計算の結果、フィルターにAl, Be, C, Tiを使用し、同じ材料の異なる厚さのフィルターを複数枚搭載することにより、 静穏領域からXクラスのフレアまでCCD上でのサチレーションを起こさず観測でき、70〜5000万度程度の温度領域で温度診断ができる解析フィルターを設計することができた。年会では、その領域の活動度に適した解析フィルターや、フィルターペアによって温度診断が出来る温度領域等の詳細を報告する。